
ビットコインを代表とする暗号資産にかかる税金の基本ルールとして、暗号資産で得た利益には、原則として所得税と住民税が課税されます。
個人が暗号資産取引で得た利益は「雑所得」に分類され、総合課税の対象となります。給与所得などと合算され、累進税率(最大45%)が適用されるため、高所得者は注意が必要です。
また、暗号資産は価格の変動が大きいため、短期間で大きな利益を得るケースも少なくはありません
取引所にログインすることで履歴を確認することはできますが、複数の取引所や海外の取引所、ウォレットを併用している場合は、管理が煩雑になる傾向にあります。
そのため、取引履歴や売却価格など日頃から記録するなど把握しておくことは重要です。
本記事ではビットコインを含む暗号資産の確定申告の条件、税金、申告しなかった場合のペナルティを、国税庁や公的機関の情報をもとにわかりやすく解説していきます。
暗号資産にかかる税金の基本ルール
冒頭でも触れましたが、暗号資産で得た利益には所得税と住民税が課税されます。
利益は「雑所得」に分類され、総合課税となります。総合課税は、給与所得などと合算した総所得に対して、超過累進税率が適用されるため、総所得金額が大きくなると、適用税率が上がります。
引用元:国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和6年12月)」
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000 〜 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000 〜3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000 〜 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000 〜 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000 〜 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000 〜 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
引用元:国税庁「No.2260 所得税の税率」
住民税は所得金額にかかわらず、10%となっているため高額な暗号資産利益を得た場合は最大で利益の55%(住民税+所得税)が税金として徴収される可能性があります。
税金が発生するのは?課税とのタイミング
以下のような場合、暗号資産の利益に対して税金が発生します。
- ビットコインを売却して日本円にしたとき
- 暗号資産で商品を購入したとき
- 持っている暗号資産を他の暗号資産と交換したとき(例:BTC→ETH)
- マイニングやステーキングで報酬を受け取ったとき
上記はあくまで一例ではありますが、このような取引により得た利益は、税務上「所得」として扱われ課税対象となります。
税金計算の具体例と計算方法
暗号資産の利益は、以下のような計算式で求められます。
売却金額(または時価)- 取得価額 = 課税対象利益
複数回に分けて購入している場合については、「総平均法」または「移動平均法」で取得単価を算出する必要があります。自分でまず計算してみたいという場合は国税庁が公開している「暗号資産の計算書」が便利です。
いくつか具体例を
ビットコインを売却した場合
(例)500,000円で0.04BTCを購入。後日0.02BTCを260,000円で売却しました。
※売買手数料については考慮していません。
上記の計算式は
260,000 – ((500,000 ÷ 0.04BTC) * 0.02BTC) となります。
取得単価(1BTCあたり)500,000 ÷ 0.04BTC = 12,500,000円/BTC
売却分の取得単価は0.02BTC×12,500,000 = 250,000円
売却金額260,000円 – 取得金額25,000円 = 10,000円となり、10,000円が所得(利益)で課税対象となります。
ビットコインをイーサリアムに交換したとき
(例)500,000円で0.04BTCを購入。後日0.5ETHを購入する際の決済に0.02BTCで支払いました。なお、取引時における交換レートは1ETH = 520,000円であった。
※売買手数料については考慮していません。
上記の計算式は
520,000 × 0.5 – ((500,000 ÷ 0.04BTC) × 0.02BTC)となります。
取得単価(1BTCあたり)500,000 ÷ 0.04BTC = 12,500,000円/BTC
交換に使った0.02BTCの取得価額は0.02BTC×12,500,000 = 250,000円
交換時点の0.02BTの時価は0.5ETH × 520,000円 = 260,000円
時価260,000円 – 取得金額25,000円 = 10,000円となり、10,000円が所得(利益)で課税対象となります。
暗号資産を利用して、他の暗号資産を取得した場合でも、売却と同様に課税対象となります。
ステーキングで報酬を受け取ったとき
(例)保有しているETHのステーキング報酬として0.1ETHを受け取った。報酬受け取り時のレートは1ETH = 400,000円だった。
※受け取った報酬に対する売却は行っていない。
※手数料やガス代は考慮しない。
上記の計算式は
受取り報酬の円換算 0.1ETH × 400,000円 = 40,000円となり、40,000円が所得となり課税対象となります。
「マイニング」「ステーキング」「レンディング」などにより暗号資産を取得した場合、その取得した暗号資産の取得時点の価額(時価)が課税対象額となります。
確定申告は必要か?申告が必要になる条件
給与所得のある会社員や給与所得のない無職・主婦・学生など、収入やその他の条件により確定申告の必要可否は異なります。
給与所得が2,000万円以下、年末調整が済んでいて、給与以外の所得が20万円以下、医療費控除や住宅ローン控除など申請しない等、すべてを満たしている会社員の場合は原則確定申告は不要です。
【ケース1】会社員
給与以外の所得(=雑所得)が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要。
【ケース2】無職・主婦・学生で扶養の範囲
給与収入がない人でも、暗号資産の売却益などで年間48万円を超える所得が発生した場合、申告義務が生じます。
給与所得のあるサラリーマンが給与以外の収入があり確定申告が必要となるボーダーラインは年間20万円となります。暗号資産にかかわらず、FXや株取引、その他の副業も含むため心当たりのある方は計算してみてはどうでしょうか。
ほかにも医療費が年間10万円を超えていたり、市販薬の購入が一定以上(セルフメディケーション税制)、ふるさと納税など確定申告をすると還付を受けられる可能性もあります。
確定申告しないとどうなるか?各種ペナルティについて
暗号資産の利益(ほか給与以外の収入の合算)が年間20万円を超えていながら、確定申告をしなかった場合、ペナルティ(加算税・延滞税)が科されることがあります。
無申告加算税
確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日までの1ヶ月間と定められています。(開始日と最終日が土日祝日にあたるときには、翌月曜日に振替え)
所得税の納付期限も確定申告の期限と同様に3月15日と定められているため、期限までに確定申告をしなかった場合に「無申告加算税」というペナルティが発生します。
50万円以下 | 50万円〜300万円以下 | 300万円以上 |
---|---|---|
15% | 20% | 30% |
令和6年分以降、上記のような段階的課税に変更されていますが、税務署から調査通知前に自主的に申告すれば、無申告加算税が「5%」に軽減される特例あります。
延滞税
期限までに確定申告をしなかった場合、納税が遅れたことに対してかかる利息的なペナルティが科せられます。
【1】 2ヶ月以内 | 【2】2ヶ月超過 |
---|---|
2.4% | 8.7% |
【1】納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは、年「7.3%」と「延滞税特例基準割合(※1)+1%」のいずれか低い割合を適用することとなり、下表【1】の割合が適用されます。
【2】納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後については、年「14.6%」と「延滞税特例基準割合(※1)+7.3%」のいずれか低い割合を適用することとなり、下表【2】の割合が適用されます。
(※1) 延滞税特例基準割合とは、各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合をいいます。
参考:【国税庁】延滞税の割合
重加算税
利益を意図的に隠すなど、「仮装・隠蔽行為」とみなされた場合、最も重い重加算税が科せられます。
申告期限内 | 無申告 |
---|---|
35% | 40% |
また、過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課されたことがあり、再び無申告または「仮装・隠蔽」申告を行った場合、加算税を10%加重され最大50%となります。
まとめ
暗号資産で得た利益は、たとえ少額でも課税対象となる可能性があるため、年間の取引履歴はしっかり記録しておきましょう。
暗号資産取引は複数取引所を利用している場合など、記録が分散して存在するため、「申告漏れ」や「損益計算ミス」が発生しやすく、悪意がなくてもペナルティ対象となることがあります。海外取引所を利用している場合は税務署も把握しづらいため、厳しい判断をされる可能性があるため要注意です。
税務署に申告しなかった場合のリスクは非常に高く、追徴課税や延滞税、さらには調査リスクも生じます。
正しい知識を持ち、毎年の確定申告シーズンに備えましょう。